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主人公の雄町哲郎は、京都の町中の病院に勤務する30代後半の内科医である。
大学病院に勤務していたが、妹の死をきっかけに、大学病院を辞め、今の病院に勤務している。
そして、シングルマザーだった妹の子どもをひきとって、一緒に暮らしている。
町中の病院は、大学病院と違い、患者は高齢者がほとんどである。
「こんな年よりに治療するのか」という人や「酒を飲んで、自堕落な生活をしていたから病気になったのに、
生活保護なんて申し訳なくて申請できない」という人がいたり、「先に亡くなった夫が今年は迎えに来てくれるかも」というご婦人がいたり、
一人一人の人生と向き合いながら、往診をしていく。
そして、患者が亡くなったとき、「本当にお疲れさまでした」と声をかける。
大学病院にいた頃は、治療した癌の形などについては、しっかり憶えているが、患者の顔をほとんど憶えていない。
でも、ここでは、一人一人の顔がよく見えるという。
妹を看取ったとき、医療の力なんて、ほんとにわずかなものだと思い知らされた。
でも、どうにもならないことがあふれていても、できることはあると教えられる。
そして、雄町は町中の病院へ替わった。
題名になっているスピノザとは、オランダの哲学者で、レンズ磨きの仕事をしながら、執筆を続けていた。
スピノザの面白いところは、希望のない宿命論みたいなものを提示しながら、だからこそ、努力が必要だというところだと雄町はいう。
そして、スピノザの哲学書のなかに、自分が知りたいことに答えを与えてくれそうな一文に、出合うことがあるそうだ。
雄町の大学の医局のデスクには、医学書はなく、哲学書が積んであったらしい。
作者は母親が大好きで60年一緒に生きて、最後は老衰で穏やかな死を迎えるまでの、ちょっとうらやましいと思ったお話。
介護道とあるので、相当辛い、気持ちが萎え希望のない話が出てくるのかと予想したが、そうではなかった。(いや、わたしなら無理ということも作者は厭わない)
なにせ大好きなのである。生きていてくれれば良しなのである。
この親子は相性が本当に良く、そうそうないケースと思う。
他に長男次男がいるが、こういう関係ではない。(家族間にも相性はある)
ほとんど喧嘩をしたことがなく、一度だけした大喧嘩も、夕飯前には元に戻れるのです。
母も娘を100%受容している。
小学生のとき、「もし、人を殺してしまったら、ママに相談しなさい」
あなたは理由もなく人を殺すような子ではない。ママは味方で、絶対に力になるし、それに悪知恵も発達しているから。と言うのです。
この上なく力強く感じたでしょう。
そんな母も夫の死後呆けてしまう時期があり、介護への道が待っています。彼女自身も鬱になったりと、大変な時期をどうにかくぐりぬけていきます。
彼女の職歴は、大学を出て就職したところが倒産し、その後派遣で働き、
どうにか定職をと食堂のパートにつき正社員になるのですが、
その間では、脚本の前のプロットから始まりやがて小説家に結び着きます。
その前に、本当になりたかったのは、実は漫画家。ストーリーはまずまずだけど、絵がとてつもなく下手だったのです。
作家と介護の2投流で頑張っていきます。母の様子を日記に書きつけ一進一退、少し喜び少ししょげる日々です。
生きていてくれさえすれば、手のひらで大便を掬うこともなんでもなく、やがて閉じようとする生に寄り添う作者。
読者は見守る思いで読むのでした。
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